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展示解説

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東京科学大学博物館に展示中の収蔵品の解説を集めました。
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#機器遺産

粒子加速器の研究の歴史

東京工業大学(東京科学大学の前身)では、1951(昭和26)年頃物理教室において「電子シンクロトロン」の作成を開始したのが、粒子加速器(粒子に運動エネルギーを与えて、速度を上げるための装置)の始まりです。その後、粒子加速器を使う研究分野は、原子「力」と原子「核」に分かれて、粒子加速という学問分野が各々の分野で発展してきました。 「原子力」の研究に関しては、中性子発生装置として「コッククロフト型加速器」(静電場による加速器)が1957年に建設され、主に原子炉物理の研究に使用さ

本多式熱天秤 ― 本多光太郎

本多式熱天秤は、本多光太郎(1870-1954年)が1915(大正4)年に高温度における物質の化学変化ならびに物理変化を連続的に測定するのに便利な装置として、世界に先駆けて創案・命名され、仙台市在住の成瀬器械店(現在、成瀬器械株式会社)によって制作・販売、終戦前、東北大学金属材料研究所による検定証が付けられました。 太平洋戦争後、本学の資源化学研究所がこの熱天秤を購入し、舟木好右エ門(1909-1988年、後に本学教授・資源化学研究所所長)・佐伯雄造研究室で新金属資源の化学

電気計測器

展示されている電気計測器類は、長年にわたって電気電子工学科の学生実験室に設置されていたものです。1924(大正13)年や1925年に購入された米国Weston社製の直流電圧計および電流計・電力計などは、1923年の関東大震災後、蔵前から大岡山にキャンパスが移転した際に購入されたものだと考えられます。それが90年もの間、使用可能な状態で残されていたことは驚きです。 長年大事に使われてきた理由の一つに、電気主任技術者制度があります。電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持