粒子加速器の研究の歴史
東京工業大学(東京科学大学の前身)では、1951(昭和26)年頃物理教室において「電子シンクロトロン」の作成を開始したのが、粒子加速器(粒子に運動エネルギーを与えて、速度を上げるための装置)の始まりです。その後、粒子加速器を使う研究分野は、原子「力」と原子「核」に分かれて、粒子加速という学問分野が各々の分野で発展してきました。
「原子力」の研究に関しては、中性子発生装置として「コッククロフト型加速器」(静電場による加速器)が1957年に建設され、主に原子炉物理の研究に使用されました。これは、重水素を加速し、三重水素に衝突させ、中性子を発生させる装置です。
「原子核」の研究に関しては、理学部物理学科に最高電圧4MVの「ヴァンデグラフ型加速器」(静電場による加速器)が1967(昭和42)年に導入されました。これは、水素、重水素を最高4.75MeV、ヘリウムイオンを最高9.5MeVまで加速する装置で、最近は原子核物理の研究だけではなく、材料科学の分野にも利用範囲は広がり、本学の多くの研究者によって活用され、今日でも順調に稼働しています。
1976(昭和51)年には原子炉工学研究所に最高電圧3MVの「ペレトロン型加速器」(静電場による加速器)が導入されました。これにより高い電圧が達成できるようになり、放射線物理の分野における原子•分子衝突基礎過程の研究、及び次世代の核分裂炉及び核融合炉の中性子物理に対して欠くことのできない中性子断面積の精度の高いデータベースを提供するための研究が行われています。
1984(昭和59)年には高周波電場による「重イオン線形加速器」が設計•建設されました。線形加速器であるため、加速エネルギーはイオンの原子量に比例し、一例として35C1では105MeVまで加速できる装置です。原子核物理と材料科学に関する学際的な基礎研究の推進を目的とし、全学共同利用に供され、本学内外の利用者によって広く利用されています。