ビタミンB₂の工業的製造の研究 ー星野敏雄・佐藤徹雄
ビタミンB₂は、1879年A. W. Blyshにより牛乳黄色色素ラクトクロームとして報告された動物の成長促進因子のことです。現在では、フラビン酵素やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形で広く生体内の酸化還元反応に関与している事が知られている一種の補酵素です。その構造は、1936年P. Karrer及びR. Kuhnにより決定され、世界各国で合成研究が行われていました。
星野敏雄(1899-1979)・佐藤徹雄 (1908-1968)両教授は、1942年から研究を始め、戦中戦後の資材不足を克服しながら研究に没頭し、1951年に工学的合成法を完成させます。以後ビタミンB₂が工業生産されるようになり、戦後における国民の体格の向上に貢献しました。合成には、3, 4-キシリジン、D-リボース及びバルビツール酸が必要になり、特に、D-リボノラクトンの連続的電解還元方法を開発しました。
このビタミンB₂の工業生産に伴い、特許実施料として莫大な国庫収入があったことから、理学部化学科教室の強い要望が実り、1963年に、理学部附属酵素化学研究施設の設置が認められました。この施設は天然物科学研究施設と改称され、1985年、理学部生命理学科へと発展していきます。
また、佐藤教授は製薬熊胆丹の主成分であるウルソデオキシコール酸を牛の胆汁酸から誘導する方法を開発しており、この方法は現在でも世界各国で使用されています。